基本構想

 

 

○ 縮 尺

本を見て感じたのはブードリオの74門艦ほど詳しくはないということでした。

だけど装飾の彫刻図なんかは真に迫るものがあります。これを省略しないで実現するためには縮尺をどうしようか。何時も縮尺率には悩みます。

今までの展覧会での作品は圧倒的に1/47が多いのです。だけどそれではあの豪華な彫刻が生きてこない。問題はそれだけではありません。私としての彫刻経験は殆ど皆無、本の画を縮尺するなんて至難の話、そこで仲間で彫刻の権威宮島さんに相談してみました。そのとき本に書かれている彫刻図が1/24になっているので、これならダイナミックさは感じられる、下絵も本をそのまま使えると、宮島さんから彫ってやるよと快諾を得たのです。強力な協力が得られ大喜びしました。

キャロラインの誕生

 

○ 構 造

最近相次いでフランス、イタリヤ、ポルトガル、スペイン、ノールウエー、デンマーク、スウェーデンと船に関係の深い国々の海事博物館を訪れました。そのうちフランス、イタリヤ以外は宮島さんと一緒に旅行をしたのです。矢張りどちらの博物館でも大体大きい船が多く、大きいほど本物に近づく、これぞスケールモデルだと自信も得ました。

 

次にコンストラクチャーにするのかプランクモデルにするかという問題です。前回の74門艦で船の構造を充分体得したので、今回は工学的な模型ではなく、装飾的作品にしようとプランクモデルを選びました。徹底的に美しく作ってみよう(自分の腕と相談しながら)ということです。

 

 

○ 費 用

次に心配になるのが費用です。1/24位の大きさになるとキットと比較しても概ね8倍の資材量、これに銘木を使ったんでは我が大蔵省が破産してしまいます。そこでこの船は塗装部分が多い、それなら安い材料を使おうと、船体は朴、デッキはアガチスと決めました。

因みに模型仲間の白井さんもビクトリーの大きいのを作っているがデッキが綺麗だったので聞いてみると材料は檜でこれならどこにでも売っているし手軽です。材料よりは作り方だと自己弁護して決定しました。

塗装については今までプラカラーを多用していましたが、今回は無公害水性塗料のアクリル絵の具を主に使いました。詳しくは本文で述べますが水で薄められるのが何とも手軽で、塗装後の皮膜も水性にしてはかなり強いのです。

 

○ ディテール

ディテールについて、図面そのまま、できるだけ省略はしたくない。たとえいつまでかかっているのと笑われても納得のいく作品にしたいと思いました。

 

○ 道 具

機械・工具は本物の船はあまり近代的な機械で造ったはずはないと、初期手造りに徹底するつもりでした。だけど一応揃えた機械、殆どがPROXXON製ですが、使ってみると非常に便利、仕上がりも良い、作業も早い、量産部品に至っては機械が手放せなくなりました。

部品形状を同じにするため徹底的にジグ造りを先にした上で工作にかかるという方針も打ち出しました。

 

○ 内部艤装

大体帆船模型の多くの作品は動物の剥製同様中身がありません。まあ帆船の剥製を作っているようなものです。そこで船体としてはこの他、王様所有のヨットとして表現するためには船室を造り込むことが必須と思ったのです。このために外国旅行をしたとき、その国の王宮に関する美術資料を何冊か求めました。

誰かがザ・ロープ展の解説でヴェルサイユ宮殿の中と記述していたが、フランス王室もイギリス王室も当時のディスプレーは大した変わりもなく、まして私たちには分かりっこもないので徹底的にごまかすことにしました。ドールハウスの教本も買いましたがどの程度役立つのか、現在は見当もついていません。

○ マストはリギンは

本当なら帆を張りたい、だけど現状では見当もつかないので考えないことにしています。

それより先に帆を立てると家から運び出すことができるのかどうかの設定が先決であります。場合によっては家の改造まで含めて考えなくては、とんでもないところまで発展してきました。