キャビン内装

○ どう考えたか

今回の船作りで最大の難関は内装です。折角大きい船を造るので、しかも王室ヨットなので何とかその辺の雰囲気が感じられるような作品にしたいと思いました。アナトミーの本にも内装については図面と写真で作品例があるのですが、とてもこれが王室かと感じ、私の好みとか意図とは大分違うように感じられました。

多くの模型がまるで動物の剥製のように外だけ着飾り、内臓は一切抜いてある、これでは面白くない、内臓のある船を造ろうなんてくだらんこだわりが強くありました。こんな事で以前からキャロラインは内装に重点を置こうと思っていたので、ドールハウスの参考書なんかで勉強もしてみました。

また海外旅行に行ったときも例えばヴェルサイユ宮殿とか、ウインザー城の詳細な写真集なんかも手に入れたのです。スペインの王宮も資料を入手しましたが、スペインの古い王宮は美しいのですがアラブ系のデザインで今回の意図とは異質のものでした。

ヴェルサイユ宮殿内部
ヴェルサイユ宮殿内部

ヨーロッパの宮殿を大雑把に眺めると、我々日本人と美的感覚が大きく違うことが良く分かります。

基調に赤色が多く、器具、什器、美術品等殆ど金を使用したものが多く、云ってみればきんきらなんです。王室を表現するのなら金を多量に使えばよい、こんな結論に達しました。

日本人好みの落ち着いた侘び寂びなどそこには見あたりません。これらを凝って作るとキャビンだけで何年かかるのかも分からなくなります。

試しにと思って蒲田のユザワ屋を覗いてみました。ありました、女性が作るような工芸材料の中に金色をした装飾材が多種類売っているのです。ただそんなに安い材料ではないので慎重に選んだつもりだったのですが、いつの間にかうん万円の出費を強いられました。

キャロライン建造当時のイギリスの経済状態と我が会計事情は大いに似てきたのです。

 

○ キャビン内装工事一応完了

今年の横浜帆船模型同好会の展覧会出品時にはほぼキャビン内装工事を完了しました。展覧会を見られた方には皆さんのお目を汚したことはご存じの通りです。

部屋の中にカンテラを入れて明るくしたらとか、グラスファイバーでのぞけるようにしてはと主にもっと詳しくみたいという、ご熱心というか、無茶というか、無理難題のアドバイスも沢山いただきました。

なかなかすぐにはお答えしにくい要望もかなりあり、作者としては頭の痛い問題が多点残りました。

 

○ 艤装の詳細

キャビン内装のコンセプトは先に少し触れましたが、今回はそのノウハウを簡単にお話ししましょう。簡単といえば要するにパソコンを多用したということです。

● 壁紙

イギリス王室で使用していたと云われる壁紙の模様を見つけました。これをスキャナーで取り込み、色と大きさを調整、コピーを重ねて壁紙のシートを作りました。

● 壁画

パソコンで画を取り込んでプリントアウトしました。これを縮小して、これまたパソコンのスキャナーで取り込んだ額縁に埋め込み、油彩画の感じをだしました。

● ステンドグラス

適当な画を選び、プリントするとき紙ではなくて専用透明フィルムシートにプリントしました。これはキャビン内の窓に両面テープで接着し小さいながらまるで教会内部をイメージできるようにしたので実感が出て、自己満足の大きい部分になりました。

● カーペット

アナトミーの本からモノクロの図をパソコンに取り込み、これをパソコンソフトで着色、ソフトのキャンバスフイルターとか、色んな効果を付けて繊維を表現、図面からあまりデフォルメしていないので図面が本物を語っているとすれば、本当のスケールモデルで再現したという事がいえる実感的なカーペットも再現しました。


● テーブル

これもイギリス王室が実際に使っていたといわれるテーブル半分の図柄をパソコンで、対称的に全面に変換加工しました。元々は寄せ木細工になっていたらしいのですが、これをベニヤで作ったテーブルに貼り付けいかにもそれらしいテーブルとして作りました。

● 金モールの飾り

部屋の中は、蒲田のユザワ屋でデコパージュ用の飾りを見つけました。これらは全て紙をプレスし表面に金色を貼り付けたモールですが何とかそれらしく見えるのでそのまま使ってみました。これで室内は非常に華やかなそして王室の雰囲気を出すことが出来ました。

● 椅子

これもドールハウスの参考書が助け船になりました。苦労したのはシートの革張りの感触です。

材木の角に丸みを付け、力テックスを塗ったらそれらしく見えるようになったのでほっとしました。それまでフエルトを貼ろうか、皮を薄くして貼ろうかと試行錯誤の連続、図柄はパソコンで細かく書こうとしたが失敗。金色の先細フエルトペンを見つけたので、イラストを手書きしました。これなら筆で塗料の組み合わせよりずっと作業がやりやすかったのです。


スターン側キャビンは女王室とダイニングルームを兼ね、赤色を基調とした部屋にしましたがデッキを貼った後は僅かしか窓から覗くしかなく、キャビン内が暗いので見えなくなり、前記の要望がでたものです。

デッキ板配置
デッキ板配置
ロングベンチ
ロングベンチ
デッキ板貼り
デッキ板貼り
キャビン階段
キャビン階段
デッキ塗装後
デッキ塗装後
メインキャビン
メインキャビン
スターンキャビン
スターンキャビン
キャビン壁画
キャビン壁画
絨毯とテーブル
絨毯とテーブル
出入口
出入口